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松井太郎 著 ”遠い声”

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松井 太郎氏
1917年神戸に生まれ 
19歳で一家ブラジルに移民
ブラジル サンパウロで農業に従事。
還暦をに機に小説の執筆を始める。

土色と赤の素朴な装丁の”遠い声”
左半分の土色は農作業袋の荒い生地、
右半分の赤はブラジルの赤土を表しているよう。
味のあるペン画は作者の物。
お世辞にも洒落た装丁といえませんが
気になる表紙。
さらに読者に挑むように
ブラジル日本人作家 松井太郎と
印刷されている。
それだけで 
泥沼のような異国移民の人生を
紐解く引導を渡された気がする。

誤解を招くのを承知で敢えて
表現するならば
本から発する並々ならぬ引力に
惹かれてしまった。
こういう体験は久しぶりだ。
手に取って最初の行を目で追ってみる。
抑制された文体そのものは乾いていながら
文面から伝わる熱量で
一気にブラジルの熱帯気候の湿った空気に
取り囲まれたような錯覚を覚える。

14編の短編と1篇のブラジル風俗詩の訳編には
土俗的な市井の日常が描かれている。
登場する人物たちは
ブラジルに入植した日本人コミュニティーで
生きている人々。
狭くて 他者との垣根の低い
濃い人間関係が緊張感を孕みながら
淡々と生活を営んでいる。
家族も他者も自分も
濃く深く絡み合いながら
どこか 心を置いてきたような
諦念を感じさせる日常。
そして 知らないうちに遠い海の沖に
連れてこられたように
不幸で身動きとれないままに 
唐突に終末を迎えるという展開。
不条理すぎるやろ~と
突っ込みを入れたくなりますわ。




Inter netに比べ
本媒体が情報として鮮度を失った現代
読みたいと手に取る本が少なくなり
自然と本を読まなくなっている。
駄目だよね・・・
だから
ますます 脳みそがスカスカになってまうわ。
これから 積極的に本探しの旅に
書店に行きます。

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by akawak | 2017-07-03 17:30 | Book